きみとぼく 第2話


「まったく、私と再会できたことが、放心するほど嬉しかったのか」

偉そうにふんぞり返りながら眼帯男は言った。

「全然違うが、それでも構わない」

大体、再会という言葉は以前知り合いだった前提が必要だ。
だが、自分はこの眼帯男とは初対面だ。
そもそもこんな生き物は知らない。

「まったくお前は相変わらず可愛げがないな」
「ほら、水だ。好きなだけ飲んだらいい」

どん、とテーブルに水の入った皿を置いた。
深めのお皿だからひっくり返したりする事は無いだろう。

「皿から直接飲めと?」
「きみのサイズの食器は無い」
「…それもそうか。-----、すぐに私用の食器を誂えろ」
「きみの我がままを聞くつもりはない。それに、こちらはきみより重症だ」

だからこれ以上相手をする気は無いと言えば、ふんと顔をそむけた後、手袋を脱ぎ水をすくって飲み始めた。ようやく静かになったかと安堵したのは一瞬で、こっちが大人しくなれば今度は別の者が騒ぎ出す。

「誰のせいだ誰の!お前がさっさと火から下ろせばこんなっ」

ぎゃあぎゃあ喚いているのは皇帝。
一番最初にフライパンに落ちたため、チビゼロと眼帯の下敷きとなった不運の人だ。一番やけどが酷く、チビゼロが軟膏を塗っている所だった。眼帯とチビゼロは黒いが、この皇帝は一人だけ白いせいか、今にも消えそうなほど儚く・・・いや、貧弱に見えた。

「それにしても、きみたちは何なんだ?ロイド博士の悪戯かな?」

頭の大きな二頭身。
おもちゃが動いているとしか思えない。
あの卵の中に仕込んでいたのだろう。
…もしかしたら他にも?
冷蔵庫に残っていた卵を取り出し、次々冷えたフライパンに割り入れたが、残りは全部普通の卵だった。運よく仕込まれていた3つを手にしていたらしい。
さて困った。
割った以上食べなくてはとフライパンを火にかけ、水を入れ蓋をする。
焦げる可能性もあるが、これで蒸し焼きになるだろう。
そうだ朝食を食べる所だったのだと、すでに冷めてしまったパンを皿に置き、別のパンを焼き始める。

「お前、どれだけ食べる気だ」
「全部食べるに決まっている」

食パンは1袋に4枚しか入ってないし、卵だって焼く前は液体だから食べた気なんてしないし、山盛りサラダがあっても食べ足りない。

「焼く前は液体だからってどんな理由だ…」

薬を塗り終わった皇帝は、ふかふかのタオルに包まって横になっていた。その傍には冷凍庫に入っていた小さな保冷材。これでで患部を冷やして様子を見るらしい。

「火傷が酷いならロイド博士を呼んだほうがいいな」
「いや、ロイドは止めておこう。解剖されかねない」

解剖じゃなくて分解では?と思ったが、ここまで精巧にできているものを壊すのは勿体ないかと連絡をするのは止めた。
先ほどセシル女史に体調が悪いから今日は休む旨を伝えたし、ナナリー代表にも連絡をしたから来るとしたら咲世子ぐらいだろう。彼女は口が堅いから、この奇妙な物を見ても誰にも言わないはずだ。
そこまで考えてふと思った。

「きみ達には、通信機能があるのか?」
「通信機能?携帯などは流石に持っていないから、連絡など取れないぞ?」
『そもそも、我々が何処の誰と連絡を取るというのだ?』
「ごくごくごく」

不思議そうな顔でいう皇帝と、小首を傾げたチビゼロ、一心不乱に水を飲む眼帯。彼らの言葉は信じられない。本当の事を言っているかどうか、見た目で解るものでもない。だから、昨日まで持ち歩いていた荷物の中から手のひらサイズの機械を取り出し、起動させた。

『それは・・・発見器か?』

盗聴器などを発見するための。

「そう、ロイド博士が作ったものだ」

だから、精度は折り紙つき。
ゼロの正体を知るために、隠しカメラなどが仕掛けられることはよくあるから、こうして自分で調べ、それらのものを見つけなければならない。そうでなければ仮面を外し食事を取ることさえままならないから。
高性能な発見器を三人に向けてみるが、反応は無し。
だからといって安心する事はできない。一定間隔で発信している場合は、そのタイミングでしか発見ができないからだ。いつも通りスイッチを入れた状態で確認するべきだろうか?だが、この三人がロイド作なら反応しないようにする事も可能か。まあ、聞かれて困る事は何も無いし、相手はロイドなら別にいいかと発見器のスイッチを切った。

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